ビートルズ嫌いは生きにくい(笑)
※ 以下、M氏こと門前まるお氏の話
ビートルズ嫌いの人間にとって、とかくこの世は住みにくい。
いや、生きにくいと言っても良い。
私・門前まるおだけかもしれないが。
特に音楽好きでビートルズ嫌いの場合、それを宣言することは、ややもすれば自殺行為になったりする。
周囲が音楽好きだったりすれば、なお更だ。
ビートルズ嫌いがコンプレックスとなった所以である。
私だけかもしれないが。
それにしても、昔から色んなハードシップに見舞われてきた。
私だけかもしれないが。
女にフラれたことだってある。
ポール・マッカートニーの熱血ファンであった女の前で、そうと知らない私は平然と『レディ・マドンナ』のヴォーカルにケチを付けた。
“Frozen Jap”というタイトルの曲を痛烈に批判した。
「なあんにも知らないくせに何よ、しんっじらんない!」
女は目をひん剥いて怒りを露わにした。
あ゙~、やってもうた。
覆水盆に返らず。
自業自得といえば、自業自得なのではあるが。
ビートルズ嫌いのせいで「毎日が生きにくい」のは今でも変わらない。
私だけかもしれないが。
例えば、現在の私・門前まるおの直属の上司、戸根次長様(仮名)は正真正銘のビートル・フリークである。
音源はCDはもちろん、すべてアナログレコードで持っている。
映像はビデオからDVDから数限りなく。
本や雑誌については、自宅以外の場所で保管庫を借りているというから、恐らくちょっとした私設図書館ができるぐらいの数は持っているのではないか。
クレイジーなのはそんなことにとどまらない。
例えば今日なんかも、エクセルファイルのパスワードにビートルズの某曲のタイトルを付けてきた。
うちの会社は、個々のパソコンではなく、部署ごとに割り当てられたサーバーのドライブにファイルを保存するのが原則。
そこの個人フォルダーにアップしておく。
もちろん部署内でファイルを共有するときは、ドライブ内の共有フォルダーにアップする。
セキュリティ上の理由から、原則的にすべてのファイルにパスワードを設定することが要求されている。
今日、次長から部員たちに送られてきたメールにはこうあった。
「先月末までの販売台数のエクセルをセーブしておきました。パスは『帰って来いよ、平成23年11月』だから」
これがパスワード、いや正確にはパスワードを示す暗号なのであるから、実に困ったものである。
氏の設定するパスは、すべて例外なくビートルズに関連するものとなっている。
大昔、『帰って来いよ』という題名の演歌があったらしいが、もちろんそれとは関係ない。
この場合、『帰って来いよ』は“Get Back”と解釈する。
そして『平成23年11月』は2011年11月ということで、“201111”と読む。
よって、パスワードは“getback201111”となる。
過去、“getback201004”とか“getback200912”とかもあった。
いくら多産なビートルさんたちとはいえ、曲の数には限りがあるから、年月をつけて同じタイトルを使いまわすことが必須となるわけだ。
アホくさ。
めんどくさ。
しかし、私もサラリーマンである。
文句を言いたいのは山々だが、こんな上司でも部下として付き合わねばならない。
ちなみに、私がビートルズ嫌いであるということは、会社の誰も知らない。
特秘、いや極秘事項と言うべきか。
むしろアイツはビートルズ好きだと思われているかもしれない。
もともと音楽好きでギターを弾くし、バンドもやってたし、会社では次長に付き合って、ビートルズ系オールディーズパブに行ったりもしているし。
行きつけのスナックに行けば、次長のためにギターで『レット・イット・ビー』なんか伴奏するし。
カラオケではもちろん……。
忘年会シーズンを目の前にして、頭の痛い今日この頃だったりする。
☆ The Beatles "Get Back"
☆ 松村和子『帰って来いよ』
(この人、歌いながらフレット見ずにリード三味線弾いてる。何気に上手い……)